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莫迦と大莫迦

世界史コンテンツ(のようなもの)


~中世ヨーロッパ 4限目 莫迦と大莫迦~ 
 












「みなさんご無沙汰しておりました、シエルです。ようやく講師として復帰できました」





「今回は、副講師として参加します。よろしくお願いします」





「4人揃うのは初めてだね」





「百年戦争について講義するらしいが、それでシエルとセイバーが2人して出張ってきたわけか」




「そうです!百年戦争!!実に素晴らしい響きですね。神の導きによってフランスは一体となりました…白銀の鎧に身を包む騎士たちが侵略軍を駆逐していく凛々しい姿!!神の守護を受けた聖女ジャンヌ・ダルクを民衆は熱狂的に支持し、次々と侵略軍に反旗を翻しました




当時の鎧は表面を磨いていないので白銀ではありませんし、ガスコーニュの住民は、フランス王より海の向こうのイングランド王に好意を抱いていたくらいなのですが…」


←聞いてない

イングランド相手に少々苦戦もしましたが、『ラ・ピュセル』ことジャンヌ・ダルクが、偉大なる神の恩寵により聖なるフランスを守護し、侵略軍を次々に打ち破っていきました」





「シエル!そのような言い方は恣意的な解釈が過ぎます!!」


←まったく聞いてない

「こうして悪い侵略軍は這々の体で島国に逃げ帰り、栄光に包まれた、かっこいいフランス軍は神の御心に従って、正義のために戦い偉大なる勝利を得た訳です。みなさん勉強になりましたね」





「・・・・・・」




「この偉大な勝利も全て神、そして神に愛された祖国フランスの偉大さ故のこと。ヴァチカンにも聖女として正式に認定されているジャンヌ・ダルクの神々しいまでのカリスマ性があったからこそ、敬虔なるフランス国民が一丸となって国難に対処できたn…」





BAKOOOOOOOOOOOOOOOMM!





「(なぜ小林源文調効果音が…)」





「さて、静かになったところで講義を再会しましょう。先ほどまでの戯れ言は、一切記憶から抹消してください。莫迦になりたいのならば、その限りではありませんが」




「確かに戯れ言だな。中世に『フランス国民』なんて概念は存在しない。その萌芽のようなものが、辛うじて現れてくる年代だと言えなくもないが少々苦しい」




「だいたいジャンヌ・ダルクなんて電波娘みたいなものです。たまたまナポレオンが彼女のことを知って、プロパガンダに利用するまで、フランス人にも無名だったくらいですから」





「そうみたいね。ほんとに全然無名だったもの…ジャンヌ・ダルクなんて。オルレアンの片田舎だけに細々と言い伝えられてきた話みたい。『オラが町の英雄』って感じかしらね」





「フランスが最終的な勝利を収めた理由は、彼らが不断の努力で為し得た各種改革の成果です。より強力な大砲を開発し、それを運用する兵制を整え、維持運用を円滑化する兵站組織とそれらを支援する官僚組織を作り上げた人々の努力の総和が彼らに勝利をもたらしました。けっしてヒステリックな聖女のみの力ではありません」





「へぇ、じゃあ今回は大砲の話?」




「いえ、それは私の専門外ですので、今回は百年戦争の野戦に限定して話をします。一般的によく誤解されているのですが、フランスの騎士は古い戦い方に固執して、イングランド軍に連戦連敗していたが、ジャンヌ・ダルクによって夜襲等の奇襲戦法を用いるようになって勝った…というのは正確ではありません」





「歯切れが悪いな。間違いでもないってことなんだろうが、どういうことだ?」




「夜襲などを行ったのは事実です。しかし、それは小規模なゲリラ戦でした。大規模な野戦を避け、地の利を生かした戦いを行っていた訳ですが、それはなぜかというと野戦をやれば負けるからです。元来中世の騎士達は決戦を避けたという点も確かにあるのですが、勝てない野戦はやらないかわりにイングランド支配地域を浸食するように、ゲリラ戦を行い、それと同時に得意の『王立砲兵隊』による攻城戦でイングランドの拠点を潰していく戦略をとります」





「フェビアニズム。かつてローマが第二次ポエニ戦役でハンニバルに対抗した戦略か」





「はい。そして最終的にはフォルミニーの戦いにおいて『王立砲兵隊』を有効に活用し、長弓戦術を破ることになるのですが、それはまた別の機会に譲りましょう」





「ところでクレシーとかポワティエとかアジャンクールとか有名な戦いがあるけど、この講義には出てこないわけ?」





「それらの戦いは、極論すると『デュプリン・ムーアの戦い』の焼き直しに過ぎません。ですから、前回のように戦いの流れは特に説明せずに、要点だけに留めたいと思います…

[クレシーの戦い]

この戦闘ではフランス軍はイングランド軍の長弓戦術の高い防御力を打ち破るべく、ジェノヴァの弩兵を傭兵として雇い入れました。しかし、長弓兵の火力に怯んでジェノヴァ弩兵は退却し、しびれを切らしたフランス騎士が正面から急襲戦術を試みて何度も撃退され敗北。前回の講義で説明した[戦訓3]が実証された訳です。


[ポワティエの戦い]  

正面から急襲戦術では、特に脆弱な馬が矢でやられてしまうことに気がついたフランス騎士は、イングランドを真似て、下馬騎兵として戦いを挑むことにしました。条件が同じなら純粋に数が多い方が勝つという単純ですが、それなりに説得力のある戦術でした。結果は『デュプリン・ムーアの戦い』を繰り返し、[戦訓3]を再び実証しただけでしたが。


[アジャンクールの戦い]

フランス騎士は、敵の下馬騎兵ではなく、まず長弓兵を急襲戦術で蹴散らせばいいと気がつきました。しかし、その意図をイングランド王ヘンリー5世に察知され、両側面を森林で挟まれた狭く泥濘化した平地に布陣(側面の防護を地形に依存)し、両端を尖らせた杭による応急の植杭陣地で、騎兵の機動を阻害(長弓兵の防護)するという対策をとられてしまいます。そしてフランス騎士達は、相手が攻撃に出てくるまで待機していましたが、じりじり接近してきた長弓兵に射掛けられると、またもや正面からの急襲戦術に訴え(以下略)」






・・・一応は学習しているみたいね、フランスの騎士達も」





「少しずつでも進歩してるだけマシかも知れないが、それにしてもお粗末だな」




「こういう説明だけだと単にフランス騎士が莫迦なだけに見えますが、それは一面的な見方です。『ポワティエの戦い』では、フランス側が終始有力な予備戦力を維持しており、運用次第では、まさに数の暴力で押し切っていた可能性も十分ありました。実際に戦いの事前交渉で黒太子は戦いを避けたがっていましたし…。『アジャンクールの戦い』でも、フランス騎士が防御に徹していれば、ヘンリー5世も為す術がなかったでしょう」





「イングランドにとっても薄氷の勝利だった、というわけか」




「はい。ちなみにリデルハートはこの3つの戦いを戦略論の中でこう評しています『クレシー、ポアティエ、アジャンクールの戦いはイギリス側の戦略的失敗寸前だったが、フランス側がそれを上回る失敗をしたため、イギリス側が救われた』つまり戦争とは、よりミスの少ない方が勝つということですね」 




「もしかして、フランスが最初から応戦せずに決戦を避ける消耗戦略をとっていたら、イングランドは何の成果も出せずに戦費を浪費し、破産して大陸から撤退していたのかもね、たしかイングランドは膨大な借金をして戦争していたはずだし」





「イタリア商人からの借金を踏み倒して破産させ、国内の商人からは全く信用されず(債権が額面の1%~0.5%で取引されていた)低地諸方やドイツ皇帝にまで借りていたようです」





「やっぱり破産寸前だったみたいね。お互い延々と国土を荒らしたり、破産寸前まで財政が追い込まれたり…それで結局領土は元通りになっちゃったし。本当に戦争って無意味ね~」





「そうですね。無益な戦争を避ける判断を下すことも王には必要です。もちろん外敵から国土を、領民を守るのが騎士の、そして王の最も重要な使命ですから、防衛戦争を躊躇う理由はありませんが。・・・そろそろ時間のようですから、今回はこれで終わりとしましょう」





「そういえばシエルが消えたままだったが、大丈夫なのか?」




ゴキブリなんて比じゃない生命力してるから、放っておいても全然問題ないわよ」





「はい。そう思って原子に還元させるつもりで殺りました。すぐに復活されても面倒でしたので」





「(シエルは次回も出番があるのだろうか…)」





「なお、次回は時間を遡って古代へと舞台を移しますので、よろしくお願いします」





「それじゃ、またね~」



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